「お兄ちゃん、ご飯、食べないの?」
尸魂界から帰ってきて数日。
出かけて帰ってきて、階段を登ろうとした所で、遊子に声をかけられる。
「あー、食うけど...」
後で部屋に持っていかなきゃな...
一瞬頭にそんな考えが過ぎり、そして思い出す。
アイツはもう、居ない。
「お兄ちゃん?」
「あ、食う。すぐ行くから」
遊子に呼ばれて、我に返る。
すっかり習慣付いてたんだな、アイツの分の食い物、部屋に持ってくってのが

部屋に戻り、財布をベットの上に投げ、階下に戻る。
親父がバカなこと云って、それに夏梨がつっこんで。
16年間続いてたごくごく普通の日常が、なんだか違う世界のように思えた。


そんなにショックだったのかよ、俺は
アイツが決めたことじゃねぇか、良かったんだろ?アレで


「なー、一護ー」
「あんだよ」
「姐さん、もう会えねーのかなー...」
コンが呟く。
そんな事、知らねぇよ。
アイツは元居た世界に残ったんだ。残りたいって思えるようになったんだ。
あの雨の日とは違う、晴れやかな表情(かお)をして、言ったんだ。


『残ろうと思う』

嬉しかった。そう、アイツが言えるようになった事が。
でも、それは本心だったのか?俺はどこかで期待していたんじゃなかったのか?


アイツが一緒に帰ってくれる事を。





「なー、一護ー」
「ウルセェな!んな事知らねぇよ!」
オマエはあのルキアを見なかったから、そんな勝手な事が言えるんだ。
あの雨の日のルキア。残ろうと思う、そう言った時のルキア。
嬉しかった、でも、悲しかった。
コン、オマエだって、あの場に居たら言えねぇよ。

『一緒に帰ろう』

なんて。






―――...うるせぇ。
俺の、“一人にして欲しい”オーラを感じ取ったのか、コンの姿は気付くとなくなっていた。
だが、浮竹さんにもらった代行証は、そんな俺には構うことなく、仕事の時間だと告げている。
正直、そんな気分じゃねぇけど。


『死神は全ての霊魂に平等でなければならぬ!』
今も誰かが襲われてるのかもしれない。
『どこまででも駆けつけ その身を捨ててでも助ける覚悟をな!』
へぃへぃ、そうでしたね。転校生の朽木さん。

「...行くか」

アイツとの唯一の絆、アイツがくれたこの力、無駄にするわけにはいかねぇんだ。


Postscript *-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


21巻のイチルキの別れから新学期始まっちゃうまでの間でのお話。突然書きたくなりました。
イチルキはですねー、お互いを想っているからこそ上手くいかない辺りが良いと思います。
優し過ぎるんだよね、二人とも。超絶プラトニック。

大晦日に突然UPが何故かイチルキ。来年はきっとまた日乱を書きます。やっぱ好きです、あの二人。
ではでは、よいお年をー!!



(12/31/06)

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