一緒にいようよ


03



  「ちょっと、何のつもり?」

  喧騒から離れた、校舎一番端の階段の踊り場。そこに辿り着くと、隆也はやっと私を放した。

  「お前、マジで野球部のマネやんねーの?」

  「...やらないよ、ってゆか、やれないよ。

  阿部野球部でしょ?」

  「...だから?」

  「それ以外に何の理由があるの?」

  「...やれよ」

  隆也の声が、少しだけ低くなる。

  「やりたかったんだろ?

  俺のことなんか気にしないで決めろよ」

  途端、私の頭に手を乗せ、柔らかい口調でそう続ける。

  「そりゃ、そうだけど...」



  中学には野球部が無かった。戸田北シニアではマネージャーは必要とされていなかった。

  小学生の時リトルで野球を始めた隆也にくっついて野球をやってた私は、ソフト部に入った。

  3年間そりゃもう楽しかったけど、やっぱり高校では野球がやりたかった。

  選手じゃなくても、甲子園に行きたかった。

  出来れば、隆也と一緒に。



  「...あのな、そりゃ、俺のこと気にしないで決めてもらいてぇけど...

  俺は、お前と一緒にやっていきたい。

  ...俺は、お前と始めた野球が楽しかったから続けてるんだよ」

  「え、」

  びっくりした。同じこと、思ってる。

  「だから、えーと「わかった」

  「え?」



  頭を掻きながら、必死に説得しようと考えてる隆也を見たら、色々どうでも良くなってしまった。

  こうやって、私の為に一生懸命になってくれる。

  私の好きな隆也だ。



  「甲子園、連れてってくれる?」

  「...当たり前だろ」

  私に背中を向けてそう答えた隆也の耳がちょっと赤くなってるのを、私は見逃さなかった。

  (隆也はクサイ台詞を言って平然としてられるようなキャラじゃない)







(キーンコーン...)

(「あ、集合時間じゃない!?」)

(「やっべ急ぐぞ!」)

(「だから呼び捨てにするな!」)





 (初出09/03/24)


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