伝えることよりも、大事なもの


07



  投手には相当クセがあった。

  でも、思ってたよりは何とかなりそうだ。

  元希さんより面倒な投手はそう居ないだろうし。


  「よし、じゃあ今日はここまで!」

  花井との3打席勝負、監督の三橋へのケツバット及び甘夏つぶし(二回目)が終わり、並びに今後の方針も決まり、解散が言い渡された。



  「おい、、帰るぞ」

  栄口と話しているに、声をかけたら反応が無い。

  「聞いてんのか?」

  「...呼び捨て」

  ゆっくり振り向いたは、そう呟いた。

  「それがなんだよ」

  「...なんだかなぁ。

  もう、いいよ」

  「は?」

  意味わかんねぇ。


  「じゃ、栄口また明日ね!」

  「おー、じゃーねー」

  栄口が去って行くと、は今度は身体ごと振り返った。

  「...帰ろっか」

  笑顔が消えている。



  「隆也ー、」

  「んー?」

  そう返せば、は俺の背中にことんと頭を寄せる。

  「...もう、なかったことにしていいよ」

  「え?」

  「幼なじみでいいよ。

  ...二度とあんなこと言わない。

  隆也の望む通り幼なじみやる」

  「...いいのか?」

  「隆也が、私が傍に居るの嫌じゃないなら」

  安心した。でも、どこか引っ掛かる。

  なんでだ?


  「嫌なわけねーだろが」

  むしろ、居てほしいんだから。

  「...ありがと」

  少し声が震えている気がした。







 (初出09/03/25)


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