一番の幸せは、一緒にいられること
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正直言って驚いた。
けど、もとにぃが私のこと大事に思ってくれてるのは知ってる。だから甘やかしてくれるのも知ってる。
もとにぃの腕の中は、あったかくて、何も言わないでくれるから心地よくて、思いっきり泣いた。
隆也に『幼なじみやる』って言った時は、割と冷静で。
だけどやっぱりだんだん悲しくなった。
なかったことにする事で、安心を与えてしまうような私の気持ち。
振られた時より、辛くて、胸の奥が痛い。
でも隆也と一緒に居たら、きっと楽しいこともある。離れたら、辛くないかもしれないけど、楽しいことは何もない気がした。
それに何より、幼なじみとしてなら、隆也が私を必要としてくれるのがわかったから。それはすごく幸せなことだと思った。
でもどこか納得出来てない部分もあって、どうしたらいいのかわからなくなってたんだ。
本当にこれでいいのか、わからないの。
そんなぐちゃぐちゃな気持ちを、途切れ途切れになりながらもとにぃに全部話したら、もとにぃは一層ぎゅっとしてくれた。
「...ちょっと痛いよ」
「あ、ワリ...
でも、お前さ、」
もとにぃは力を緩めて私を解放すると、左手で緩慢に私の顔を包んで涙を拭う。
マメだらけの、大事な手。
その手に触れても、もとにぃは私なら怒らないでいてくれる。
今だってその手で私に優しく触れる。嬉しいなって思った。
「辛いときは辛いって言えよ?
いつだって、しんどいって言っていいんだよ。
...そん時は俺が支えてやるから」
...!
視界が歪んでるからわからなかったけど、もとにぃの顔はだいぶ近くにあったみたいで、最後は耳元でそう囁かれた。
不覚にもきゅんとしてしまって、顔が熱くなるのがわかって、もとにぃから離れて顔を背けようとしたら、逆にまた抱え込まれてしまって、
しばらくドキドキしてたけど、やっぱり温かさに安心してまた少し涙を流した。
しがみついたまま寝てしまった私をもとにぃが運んでいる最中に、おばあちゃんが帰って来て、からかわれたと文句を言われたのは、また別の話。
(初出09/03/25)