大事に想ってくれる人たち


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  「おはよー」














  昨日、10時くらいに一度起きたら、元希が私の手を握ったまま私のベッドに頭だけ突っ伏して寝てた。おばあちゃんがかけてくれたのか、肩からは毛布がかけられている。

  (よかった、肩冷やしてないね)

  ゆるく握られた左手を、きゅっと握り返してみる。

  (疲れてるのに、来てくれたんだなぁ)

  そう思うと、また嬉しくなった。


  「...ん、...?起きたのか?」

  元希が眼をこすりながら、顔を上げた。

  「うん...ずっと、居てくれたんだね」

  「おー、ちょっとしたら帰るつもりだったんだけど、

  ...俺まで寝ちまってたのか。

  ってあれ?毛布?」

  「おばあちゃんじゃない?」

  「だろうな。助かった。肩冷やさねェで済んだ」

  「元希も疲れてるのに、ごめんね?」

  そう言うと、元希はゆるく頭を撫でてくる。

  「いーんだよ、お前はんな事気にすんな。

  ...お前が俺に居てほしい時はいつでも来てやるよ」


  「...ありがとう」

  元希は私のヒーローだね!

  って言ったら、笑われた。


  それから元希と一緒に(私は軽く、元希はしっかり)夕飯を食べて、おばあちゃんと一緒に元希を玄関まで送って、

  なんだかすっきりしたような気分でまた部屋に戻ると、携帯が新着メール一件を知らせていた。


  『明日、学校何時に行く?』

  隆也だ。

  「7時半過ぎくらいかな、っと...」

  ぁ、ジャージ用意しとかなきゃ。

  そんなことを思いながら、返事を送る。

  数分後、また新着メール一件。

  『わかった。じゃ7時半頃に迎えに行く』

  ...相変わらずすごい神経ですこと。












  「おー、はよ。ジャージ持ったか?」

  「うん。大丈夫」

  なんだかんだ、朝から隆也と居られるのは嬉しい。

  「お前、チャリは?」

  「今、修理中。乗っけて?」

  隆也に言われてやきもきするよりも、自分から言った方が少し楽だ。

  「そっか、りょーかい」

  隆也の承諾を受け、荷台に横座りして、背中にしがみつく。

  「んじゃ、行くぞー」

  「よろしくー」

  やっぱり、こういうの楽しいや。







  学校に着き、一緒に教室に入る。入ってすぐの廊下側の席の隆也と分かれ、自分の席に向かおうとすると見知った顔を見つけた。

  「千代、おはよー」

  「あ、、おはよー」

  中学時代のチームメイトで、親友の千代だ。


  「昨日はどうしたの?部活...」

  昨日は隆也に引っ張られていたせいで千代とは話せなかった。

  でも、彼女も野球部のマネージャーをやると言っていたから、部活で会えるだろうと思っていた。

  「あ、えっと、甘夏が...」

  甘夏?って、監督が潰してた?

  「甘夏がどうしたの?」

  「や、ううん!なんでもない!今日からは行くから!」

  珍しく取り乱した千代に、私はびっくりだ。まぁとりあえず今日から来てくれるなら安心!


  「それより、大丈夫?」

  「え、なにが?」

  「なにが?って...

  ...阿部くんとは大丈夫?」

  あぁ、そのことかぁ...



  『と阿部くんって付き合ってんの?』

  中学時代、いつでもどこでも言われてて、

  私はいつも、


  ほんとだったらいいのに


  って思いながら笑って否定して躱してた。

  だけど部活の皆にだけは本当の気持ちを伝えてて、

  『大丈夫だよ、きっと上手くいく』

  受験が終わった頃から、告白しようかなって悩みだした私を皆いつも励ましてくれていた。

  だから、元希と同じく皆も私の告白の結果は気にしてて、

  3月の終わりに部活の皆で遊んだ時に報告していたのだ。



  「あぁ、なかったことにしてもらったから」

  「えー!?」

  「ちょ、千代声おっきいよ!」

  「あ、ごめん!」

  教室中の視線が私たち二人に集まっているような気がして恥ずかしかった。

  「...けど、ほんとにいーの?」

  千代は声のボリュームをだいぶ下げて、そう聞いてきた。

  「...気まずくなるより、やっぱり一緒に居たいなって、思ったから」

  「...」

  私の返事を聞いて、千代はぎゅーっと抱き締めてきて、それから頭を撫でてきた。

  ―頑張ったね。

  そう言ってくれてる気がした。








 (初出09/03/25)


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